スクラップブック(その1)
投稿者:渡辺 |
投稿日:2014 年 8 月 26 日
僕の体験した不思議な話です。今から十数年前、僕は独身で2DKのアパートで一人住まいでした。
たしか夏の暑い日の夕暮れのことです。エアコンの効いた部屋で、横になって読書をしているうちに、いつの間にか眠ってしまったようです。微かな気配を感じ、ふと目を覚ますと、玄関に見たことのない人がいたんです。
髪を短くした50代くらいの眼鏡を掛けた男性でした。僕はとっさに「あなた誰ですか?」と声を掛けたんですが、答えません。
それどころか僕のほうを見ようともせずに、部屋に勝手に上がってきて、なにかを探しているようでした。まるで当たり前のことように、押入れを空けようとしています。
不思議なことに、恐怖感は感じなかったことを憶えています。
おそらく僕の前にアパートに住んでいた住人で、忘れ物を取りにきたのかな、と思いました。
でも、もう僕が住んでから半年も経っているのに、何の断りもなくいきなり入ってくるなんて失礼だとも思います。
そう考えると、だんだんと腹がたってきて、「勝手に人の部屋に上がってきて何をするんですか。帰ってください。」と言ってしまいました。
すると、そのおじさんは初めて僕の存在に気がついたようで、「ここは俺の部屋だ。」と言って僕に向かってきました。そして、僕の首を掴んだように思います。と同時に、僕は気を失ってしまいました。