個人の所得税
1. 医療費を支払った場合
医療費を支払った場合には、一定額を所得から控除できる「医療費控除」という制度があります。
- (1). 支払った医療費-その医療費について受け取った保険金・損害賠償金など
- (2). 課税標準の合計額の5%と10万円のいずれか少ない方
- (3). (1)-(2)=医療費控除の金額
①. 対象者
- 本人
- 同一生計親族
なお、同一生計親族には、次のような場合も含まれます。
- イ. 日常の起居を共にしていない親族が、勤務、修学等の余暇には他の親族のもとで起居を共にすることを常例としている場合
- ロ. 親族間において常に生活費、学資金、療養等の送金が行われている場合
②. 支払った医療費
「実際に支払った年」の医療費控除の対象になります。
③. 医療費控除の対象となる医療費
次のようなものが該当します。
なお、一般的に支払われる水準での範囲内のものが対象となります。
- イ. 医師や歯科医師への診療代、治療代
- ロ. 治療や療養に必要な医薬品の購入代
- 病院での処方箋代や薬局での風邪薬代など
- ハ. 病院、診療所、助産所への収容代
- 診療等を受けるための通院費など(電車代やバス代、急を要するときのタクシー代)
- 自家用車のガソリン代や駐車場代などは対象になりません。
- ニ. あんまマッサージ指圧師、はり師、灸師、柔道整復師による施術代
- 治療によるものに限られますので、単なる疲れを取るためなどの場合には対象になりません。
- ホ. 保健師、看護師、准看護師への療養上の世話代
- 上記以外の人でも特に依頼をした人(家政婦など)であっても対象になります。
- ただし、身内(親族)のような場合には対象になりません。
- ヘ. 助産師による分娩の介助代
- いわゆる出産費用ですが、定期検診や保健指導の費用なども対象になります。
なお、医療費控除の対象となるものは「治療に必要なもの」に限られていますので、次のようなものは対象になりません。
- イ. 人間ドッグその他の健康診断ための費用
- ただし、健康診断により重大な疾病が発見され、かつ、その疾病の治療をした場合には、その健康診断の費用も対象になります。
- ロ. いわゆる美容整形のための費用
- ハ. 予防や健康増進のための費用など
- ニ. 眼鏡やコンタクトレンズの購入代
- なお、白内障や緑内障の治療に伴う購入代金は対象になります。
- ホ. 医師などへの謝礼
- ヘ. 健康診断書の作成料金
④. 保険金などの控除(その1)
支払った医療費からは保険金を控除しなければなりませんが、控除する保険金などは「医療費を補てんするもの」に限られます。
なお、次のようなものは支払った医療費から控除する必要はありません。
- イ. 傷病手当金や出産手当金
- ただし、出産育児一時金は医療費から控除しないといけません。
- ハ. 見舞金など
⑤. 保険金の控除(その2)
医療費を補てんする保険金が、確定申告をする時までに金額として確定していない場合には、見込額を控除します。
⑥. 保険金の控除(その3)
医療費の全体から保険金の全体を引いた金額ではなく、個々の医療費ごとに医療費から保険金を控除して計算します。
2. 居住用財産(マイホーム)を売却した場合
居住用財産を売却した場合には、売却益か売却損かにより取扱いが異なります。
総収入金額 - ( 取得費 + 譲渡費用 ) =売却益 ・売却損
↓ ↓ ↓
売却代金 購入代金-価値の減少分 売却費用
(1). 売却益の場合
- ①. 3,000万円の特別控除の特例
- ②. 税額軽減の特例
- ③. 特定居住用財産の買換え等の特例
①. 3,000万円の特別控除
所有期間に関係なく居住用財産(居住用家屋やその敷地)を売却した場合に控除することができます。
②. 税額軽減
長期の土地を売却した場合には、原則として一律20%(住民税を含みます。)の税率で課税されますが、所有期間が10年を超える居住用財産を売却した場合には、課税される所得が6,000万円までの部分は14%(住民税を含みます。)、6,000万円を超える部分は20%(住民税を含みます。)で課税される特例があります。
③. 特定居住用財産の買換え等
居住用財産を売却して新しく居住用財産を購入した場合には、その購入した居住用財産の取得価額までの分は課税されないというものです。
つまり、売却代金の方が購入した居住用財産の取得価額よりも大きい場合には、その差額の部分について課税されます。
- イ. 売却資産の要件
- 所有期間が10年超であること
- 居住期間が10年以上であること
- ロ. 購入資産の要件
- 家屋の面積が50㎡以上であること
- 土地の面積が500㎡以下であること
なお、①と②の併用は認められていますが、①と③や②と③の併用は認められていません。
例 示
(1). 売却資産
- 売却代金 50,000,000円
- 取得費 15,000,000円
- 購入時期 昭和44年8月20日(当初からずっと居住)
- 売却費用 500,000円
(2). 購入資産
- 購入代金 48,000,000円
- 家屋の床面積、土地の面積は要件満たしているものとします。
(3). 3,000万円特別控除を選択した場合
- ①. 総収入金額
- 50,000,000円
- ②. 取得費・譲渡費用
- 15,000,000円+500,000円=15,500,000円
- ③. 譲渡所得の金額
- ①-②=34,500,000円
- ④. 課税所得金額
- 34,500,000円-30,000,000円=4,500,000円
- ⑤. 税額
- 4,500,000円×14%=630,000円
(4). 買換え等の特例を選択した場合
- ①. 総収入金額
- 50,000,000円-48,000,000円=2,000,000円
- ②. 取得費・譲渡費用
- (15,000,000円+500,000円)×2,000,000円/50,000,000円=620,000円
- ③. 譲渡所得の金額
- ①-②=1,380,000円
- ④. 課税所得金額
- 1,380,000円
- ⑤. 税額
- 1,380,000円×20%=276,000円
※ 上記の例示では、買換え等の特例を選択した方が有利となります。
ただ、購入した資産を将来売却する場合には、購入代金48,000,000円を基に取得費の計算はできず、売却資産の取得費等のうち今回使用されなかった分14,880,000円(15,000,000円+500,000円-620,000円)を基に計算しますので、将来支払う税金が高くなる場合があります。