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法人税の改正について注意点

 役員給与(役員に対して支給する給与)について

 

1. 概要

 法人税などの税金をなるべく払わないように経費を計上するような租税回避行為を防止するためや、法人税と所得税を通じた課税もれが生じないようにするために、現在の役員給与は非常に複雑な取扱いになっています。今回は基本的な流れを、お話させていただきます。
 もちろん、原則的に役員に対して支給する給与は、法人税で考える経費(以下、「損金」といいます。)になります。しかしながら、一部は損金にならなくなってしまうのが、法人税の特殊な取扱いになるものとイメージしてみましょう。役員に給与を支給したにもかかわらず損金にならなくなってしまうのは非常にもったいないことですので、これを踏まえた上でしっかり対策をする必要があります。

 

2. 法人税での考え方

 まず初めに、役員に対して支給した給与が、定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与のいずれかに該当するかどうかを判定します。(この判定については、後に具体的に説明します。)いずれにも該当しなければ、すべて損金の額になりません。また、定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与のいずれかに該当することとなった場合には、その金額に不相当に高額な部分の金額(その役員の職務内容等から考えて、いわば「もらい過ぎ」となっている金額)がないかを判定し、不相当に高額な部分の金額が、損金になりません。
 さらに、上記までで損金になった金額については、もう一つ考えることがあります。それは、(法人税法に定める)特殊支配同族会社という会社に該当するかどうかということです。(特殊支配同族会社については、後に説明します。)仮に、この特殊支配同族会社に該当した場合には、その会社の経営方針などの最終的な意志決定を行っている役員(基本的には代表取締役になります)に対して支給した給与の額のうち、所得税法で規定されている給与所得控除の金額が、損金になりません。これは、法人税と所得税を通じた課税もれが生じないようにするためなのですが、少し分かりにくいかと思いますので、下記3で具体的に考えてみようかと思います。

 

 なお、定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与は、それぞれ細かく規定されていますが、今回は定期同額給与だけで、下記3の具体例で考えてみましょう。定期同額給与とは、毎月の支給額が同じである給与とイメージしてみましょう。
 また、特殊支配同族会社とは、その会社の経営方針などの最終的な意志決定を行っている役員の一族によって、その会社の発行済み株式総数等の90%以上の株式等を保有されているなどの要件を満たす会社というイメージになります。

 

3. 具体例

 文字だけだと少しイメージしにくいので、具体的な金額を使って考えてみましょう。
 前提としては、当社の役員はAさん・Bさん・Cさんの3人で、その中でも会社の経営方針などの最終的な意志決定を行っている役員は、Aさんとしましょう。また、それぞれの役員に対して支給した給与は、以下のようになっています。

  • ①. Aさん
    • 毎月の給与・・・月100万円×12ヶ月=1,200万円
  • ②. Bさん
    • 毎月の給与・・・月80万円×12ヶ月=960万円定期同額・事前確定届出・利益連動給与のいずれにも該当しない給与・・・50万円
  • ③. Cさん
    • 毎月の給与・・・月30万円×12ヶ月=360万円ただし、Cさんは実際にはほとんど出勤しておらず、給与として相当な金額(「もらい過ぎ」とはならない金額)は、月10万円×12ヶ月=120万円

 

 まず、定期同額給与・事前確定届出給与・利益連動給与のいずれにも該当しない、Bさんの給与50万円は損金になりません。
 それ以外の給与は、すべて定期同額給与に該当しますが、Cさんの給与は120万円を超えてしまっている金額、つまり360万円-120万円=240万円は不相当に高額な金額ですので、240万円も損金になりません。
 さらには、もし当社が特殊支配同族会社に該当してしまった場合には、Aさんの給与のうち、所得税で規定されている給与所得控除になる金額が損金になりません。給与所得控除の金額は、その給与額によって異なりますが、給与額が1,200万のときの給与所得控除の金額は、220万円となります。
 したがって最終的には、実際にAさん・Bさん・Cさんに支給した給与のうち、50万円+240万円+220万円=510万円が損金にならないという結果になります。

 

4. 最後に

 かなりおおまかにご説明させていただきましたが、役員給与の判定は、実態に応じて考えていかなくてはなりません。したがって、給与の支給形態・株主構成・定款などから細かく見ていく場合もありますので、まずは顧問税理士に個別にご相談ください。