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法人税の改正について注意点

欠損金の繰越控除と繰戻還付

1. 概要

 法人税は、1年間のもうけに対して課税される税金です。ところが、厳格に1年間のもうけだけで法人税の計算を行うと、不都合が生じる場合があります。
 たとえば、X・Y・Z社があり、1年間のもうけがそれぞれ以下のように推移していたとしましょう。

 

  第1期 第2期 合計
X社 100 100 200
Y社 -100 300 200
Z社 300 -100 200

 

 そして、1年間のもうけの30%が法人税として計算されたとすると、法人税額は以下のようになります。(もうけがマイナスの場合には、法人税額は0になります)

 

  第1期 第2期 合計
X社 100 100 200
Y社 -100 300 200
Z社 300 -100 200

 

 以上のような3つの会社があったとすると、第1期と第2期の合計のもうけはすべて200で同じですが、法人税額の合計が60だったり90だったりとズレが出ています。そこで、第1期と第2期の「プラスのもうけ」と「マイナスのもうけ」を相殺して法人税額を計算するのが、欠損金の繰越控除や繰戻還付の制度のイメージになります。

 

2. 繰越控除について

 過去7年間に生じた「マイナスのもうけ」を、うしろに相殺して考えるのが繰越控除のイメージです。
 さきほどの例ではY社が適用できる制度になりますので、具体的にY社で考えてみましょう。Y社では第1期にマイナスのもうけが生じていますので、第2期のもうけを計算するときには第1期のマイナスのもうけと相殺して300-100=200となり、第2期の法人税は200×30%=60となります。これにより、Y社の第1期と第2期の法人税額の合計は、0(第1期)+60(第2期)=60となり、X社の法人税額の合計と同じになります。

 

3. 繰戻還付について

 当期に生じた「マイナスのもうけ」を、まえに相殺して考えるのが繰戻還付のイメージです。繰越控除と似ていますが、相殺できる期間が1年というのが、繰越控除との大きな違いになります。また、還付というのは、一度納付した税金を返してもらうことをいいます。
 さきほどの例ではZ社が適用できる制度になりますので、具体的にZ社で考えてみましょう。Z社では第2期にマイナスのもうけが生じていますので、これを第1期のもうけと相殺して考えていきます。そうすると、第1期のもうけは第2期のマイナスのもうけと相殺して、300-100=200となります。これにより、第1期の法人税は200×30%=60でよいことになりますが、すでに第1期の時点で90を納付してしまっているので、差額の90(すでに納付した法人税)-60(第2期のマイナスのもうけと相殺して考えたときの法人税)=30を還付してもらうことになります。
 以上のように考えると、一度は第1期の申告のときに法人税を90納付しますが、第2期の申告のときに法人税を30還付してもらいますので、Z社の法人税額の実質的に負担した法人税は60となり、X社の法人税額の合計と同じになります。

 

4. 注意点

 繰越控除も繰戻還付も適用できる場合には、最終的な法人税額はX・Y・Z社とも同じ金額になることを確認してきました。ただし、この制度を適用する場合には、3つの注意点があります。
 まず1つ目の注意点は繰り返しになりますが、繰越控除と繰戻還付は相殺できる期間が異なることです。繰越控除は7年間ですが、繰戻還付は1年間になります。
 次に2つ目の注意点は、繰越控除も繰戻還付も、基本的には青色申告をしている法人のみが適用することができることです。
 そして最後の注意点は、現在、繰戻還付の制度は適用停止中になっているため、繰戻還付は適用することができません。平成21年4月以降の改正により、再び適用できるようになることも検討されていますが、現在は適用できないことになっています。
 手続き的な部分は、ほかにも細かい注意点がありますが、実際に適用することがあるようでしたら、個別に顧問税理士にご相談ください。